対象疾患 振戦

自分の意志とは関係なく手足が振るえることを『振戦』と言います。健康な人でも針の穴に糸を通そうとするときや緊張したときなど、余計な力が入ってしまって手が振るえることがありますが、このような振るえを生理的振戦と言います。ただし、病気によって振戦が強くなると日常生活に支障を来すようになりますので治療が必要となります。

手が振るえてしまうためにうまく文字を書けなかったりコップをうまく掴めなかったりする、といった症状がある場合は『本態性振戦』の可能性があります。本態性振戦の特徴としては、手足を動かしていないとき(安静時)は振るえないことやお酒を飲むと症状が改善するといった点も重要です。逆に、パーキンソン病の場合は動作時には振るえないけれども手を膝の上に休ませているときや、寝ているときに手足が強く振るえてしまうといった症状が出ます。しかし、本態性振戦はパーキンソン病の一症状として表れる場合や、パーキンソン病のような症状(体の固さや動きの遅さなど)を伴うような場合や、甲状腺機能亢進症などの代謝性疾患が隠れている場合もありますので、専門家による診断が重要です。本態性振戦は40歳以上の年齢層に多く見られ、家族性にこの病気を発症することもあります。

他にも、脳卒中(脳出血や脳梗塞)や脳に傷がついてしまう重症頭部外傷の後遺症、もしくは多発性硬化症といった自己免疫疾患などによる後遺症としても激しい振るえが起きることがあります。こういった病気を Holmes 振戦とも言いますが、Gordon Holmes 先生というイギリスの神経内科医によって最初に報告されました。さらに、ジストニアによって体の一部が振るえる場合(ジストニア振戦)や、立ち上がったときに振るえる場合(起立性振戦)もあります。

これらの異常な振戦の原因は脳の基底核という体の動きを調節する部位の異常活動と考えられています。治療にはいずれの場合も神経の興奮を抑えるような内服薬を使用しますが、効果が不十分な場合には脳深部刺激療法も治療の選択肢となります。

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